イベント運営の提案 #02 救護体制と運用

アフターコロナでは人手不足と人件費高騰への措置として、効率の良い運営、スタッフのクオリティに頼らない運営などが求められています。
イベントナガノではイベント運営グッズの活用や徹底した事前準備に基づいて運営をしています。その中で、気がついたベターな運営方法を提案いたします。
イベントの規模や会場レイアウトなどで運営方法は変わってきますが、参考にしていただければ幸いです。

今回のコラムでは救護体制と運用についてお話しいたします。

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まずは要救護者のもとに向かう

まずは要救護者の最も近くにいるスタッフが現場に向かうことが肝心です。
ただし、自身のリーダーや本部に連絡が取れるスタッフに伝えてから向かうようにしましょう。それにより応援が来ますし、救護本部にできるだけ早く第一報を入れることで様々な対応が可能となります。
できない場合は、現場に向かう途中で見つけたスタッフに報告をお願いしたり、後述の要救護者プラカードを持って行くなど、応援が来やすいようにしましょう。

現場についたら、まずは応急処置です。応急処置は周りのお客様にも協力をお願いして最善の方法を取りましょう。
救急対応ができる方には一緒に応急処置を、場合によっては移動や簡単な手伝い、他のスタッフの応援の呼びかけなど、様々なお願いが必要になります。

応援が来たら役割分担

応援が来たら、スタッフのスキルに合わせてABCの3つの担当分けで適切な救護活動に移行します。

【A業務】要救護者の救護をするスタッフ

救急対応ができるスタッフは要救護者の救護に専念してください。本部への連絡や備品調達は別のスタッフに指示し、専念することが大事です。

【B業務】救護本部と連絡を取り合うスタッフ

インカム(トランシーバー)で本部と連絡を取り合うスタッフを固定します。今後の連絡を一手に引き受けます。インカムで複数スタッフが返事をすると混乱のもとになりますので、的確な対応のためには大事な作業です。
Aの救護スタッフから状況・年齢や性別・同行者・医師/看護師の現地派遣の有無を聞き取り、それを救護本部に伝えます。また、必要に応じて救護本部からの返答を救護スタッフに伝えます。

【C業務】備品手配や導線確保など、環境手配をするスタッフ

AED、ストレッチャーや氷など救護対応に必要な備品や、誘導動線や要救護者の運搬のためスタッフの手配を行うスタッフです。
A・B業務との同時進行は難しいため、それそれ別のスタッフが対応したほうが良いですし、要救護者の運搬後にも吐瀉物の清掃などの復旧作業が必要となることもあります。

【救護本部】様々な対応ができるよう準備

救護本部は第一報を受けた時点で会場に待機している医師・看護師の手配が可能かどうか、救護室の空き状況や運搬方法(ストレッチャー・タンカ・スタッフ車両など)、AEDやストレッチャーの手配状況の確認などを行います。
また、熱中症などは同時多発的に発生するため、連絡を受けた時点で「要救護者Aさん」「Aさん」など対応のためのコードネームを決めてスタッフ間で共有するようにします。これにより要救護者が複数いた場合でも混乱を防ぎます。

要救護者の場所を正確に伝えるには?

終演時の時間差退場案内@キッセイ文化ホール

インカム(トランシーバー)だけで要救護者の場所を正確・的確に伝えるのは中々難しいです。
コンサートホールなどでは○階 ○列 ○番とわかりやすく伝えることができますが、1万人以上の客席があるスタジアムの自由席などでは「○列 ○番」では伝わりにくく、「ホーム自由席ホームゴール裏S2ゲートから入って左に進み1つ目の階段を降りて前からだいたい6列目の左に少し入ったところの…」と伝えてもなかなかスタッフが集まりにくいです。

試合中などは現地で「おーい、ここだ~」って叫んでもすぐに気が付きません。

そのため、弊社では要救護者の元に向かう際、「要救護者」の案内表示(POP)も一緒に持っていきます。これを掲げることで応援や会場ドクターをわかりやすく誘導できます。
夜間のイベントでも光るプラカードを使用して明るくわかりやすく掲示することで要救護者の元にすばやくたどり着けるようにしています。
また、こちらの案内表示は入口や大会本部、余裕があれば各ゲートに設置しておき、すぐに使用できるよう準備をしておきましょう。

終演時の時間差退場案内@キッセイ文化ホール

こちらのデータは以下のリンク先で無料提供しています。同時多発的に発生した際に「ドクターは赤黒のPOPへ」「ストレッチャーは赤白のPOPへ」など的確な指示を行うために4パターン用意しています。

救急車は救護本部が呼ぶこと

お客様や各スタッフが誰彼なしに救急車を手配すると何台も到着しかねません。
また、救急車が到着した際には警備スタッフとの連携や会場内への誘導、会場との交渉など、本部でないとできない事が多いです。救急車は手配から含めて救護本部が対応しましょう。

また、これは事前にお客様にも知っていただきたい内容です。
「体調不良の方が近くにおられたらまずはお近くのスタッフにお声がけを!」と告知することが大事です。

なお、基本的なことですが当日の休日当番医などは調べて本部に掲示しておきましょう。

マニュアルは大事だが、すべてのスタッフが迅速な救護を行うことは無理と理解したうえでの救護体制

前述の通り、現場には「要救護者の介助をする人」「本部と連絡を取る人」「フォローする人」の3名がいれば救護体制は回ります。
同時多発する可能性を考慮して、規模に合わせて複数チームが組めればベターです。

逆にそれ以外のスタッフは前提条件(まずは現場に向かう・お客様に協力いただく・引き継ぐ)をしっかり覚えておくことでスムーズな対応ができます。
・まずは駆けつけること
・お客様に協力いただいて初期対応を行うこと
・他のスタッフを集めること(集まりやすくなるプラカードなどを掲示すること)
・救護スタッフに引き継ぐこと
・救護スタッフが集まったら指示に従うこと(「もう大丈夫。持ち場に戻ってください」という指示をもらうまで)

以上のことは、ほとんどのイベントに共通する基本的な対応として、イベントごとではなく会社としてマニュアル化しておくといつでも対応できます。
会場規模によって違いはありますが、イベントによって対応が異なるとスタッフが混乱してしまうので、統一することが大切です。

また、急な救護に対して複雑なマニュアルを熟読してその通りにしろ…というのはイベント慣れしていないスタッフはもちろん、慣れたスタッフでも難しいことがあります。
そのため、「最低限ここまでは対応する・してほしい」という部分のみレクチャーをし、あとは慣れたスタッフがバックアップできる体制を整えるのが現実的と言えます。

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